年金制度はすでに数十年にわたって継続しているので、白紙に新しい制度を描くのとは訳が違う。
これまでの制度との連続性が確保されなければならない。
困難な課題である。
特に問題となるのは、これまでの制度で保険料を支払ってきた人と、支払わなかった人(あるいは、不十分にしか支払わなかった人)との区別だ。
まず、未払いがなかったとしても、年齢によって累積支払額は異なる。
それらを同一に扱ってもよいだろうか?さらに、国民年金については、最近の時点では約6割の人しか保険料を納付していない。
未払いの人のなかには、「年金はいらないから、保険料は払わない」という「確信犯」も多いに違いない。
これらの人に対して、完全に支払った人と同額の年金を給付するのでは、「正直に払った人が損をする」ことにならないか?こうした問題に対処するには、保険料支払者が存在する世代に対する給付は、保険料支払額を考慮して年金額を調整しなければなるまい。
その計算は複雑だし、年金給付においては、「保険料方式」が残存し続けることになる。
この移行が完了するまでには何十年もかかるだろう(じつは、経団連は1998年に「税方式」を提言したが、保険料をすでに納めた人に不公平感が生じるという批判があって、議論は沙汰やみになったという経緯がある)。
第二の問題は、所得制約だ。
全額を税で賄う給付は、実質的には公的扶助(生活保護)である。
以上のように考えればわかるように、最も本質的な問題は、「税方式に移行することの必然性。
したがって、所得制約が必要になる。
問題は、この「所得」としていかなるものを採り、どのように捕捉するかである。
給与所得とすれば、給与所得者に著しく不利である。
また、年金受給年齢において労働を続けることに対する強い阻害要因となる。
現在の厚生年金の在職老齢年金は、給与所得によって年金の減額または停止を行なっている。
基礎年金について給与所得だけを基準にして所得制約をかければ、現在の在職老齢年金とは比較にならぬほどの不公平と歪みが発生する。
ところが、事業所得や資産所得等を含めた所得を正確に捕捉するのは、現在の徴税体制では困難だ。
特に資産所得については、分離課税になっているものが多いため、現在の税制では把握ができない。
資産所得を除外して所得制約を課するのでは、高額の資産を保有する高齢者に著しく有利である(本来は、そうした人に対する年金をこそ制限すべきであるにもかかわらず)。
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